「ネットワークビジネスに誘われたけれど、ねずみ講ではないの?」「家族が続けているビジネスは、法律的に大丈夫?」。
結論から言うと、日本の法律では、MLMとねずみ講は別物です。ねずみ講は法律で全面的に禁止され、MLM(マルチ商法)はルールを守る限り認められています。ただ、合法であることと、健全であることは同じではありません。
MLM製品の買取専門店「MLMバイヤーズ」の編集部が、勧めも否定もしない立場で、条文をもとに違いと見分け方、やめたいときのルールを整理しました。
目次
MLMとねずみ講の違いとは?法律と仕組みで比較
ねずみ講(無限連鎖講)とは?法律で禁止された金品の配当組織
ねずみ講は、法律上は「無限連鎖講」と呼ばれます。無限連鎖講の防止に関する法律第2条の定義をかみくだくと、後から入る人がねずみ算式に増えていく前提で、先に入った人が、後から入った人の出したお金から、自分が出した以上のお金を受け取る「金品の配当組織」です。
人口には限りがあるので、新しい加入者はいつか必ず尽きます。第1条も、無限連鎖講は「終局において破たんすべき性質のもの」だとしています。
そのため第3条は、開設や運営だけでなく、加入や勧誘も禁止しています。罰則は2025年6月から「拘禁刑」に改められました。開設・運営は3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(またはその両方)、勧誘も20万円以下の罰金などの対象です(第5条〜第7条)。
MLM(マルチ商法・連鎖販売取引)とは?特商法で規制される販売の仕組み
MLM、ネットワークビジネス、マルチ商法は、法律上はほとんどの場合、特定商取引法第33条の「連鎖販売取引」にあたります。
条文の要点は2つです。商品やサービスを人に売ったり、買う人を紹介したりする人を、「特定利益」が得られると言って誘うこと。特定利益とは、ほかの参加者が払う入会金や商品代などから生じる利益です。そして、商品の購入代金や入会金などの「特定負担」を伴うことです。
特定負担は、消費者庁の特定商取引法ガイドによると「1円以上の負担」です。
比較表で見る違い:利益の出どころ・商品・法律・罰則
| ねずみ講(無限連鎖講) | MLM(連鎖販売取引) | |
|---|---|---|
| 根拠となる法律 | 無限連鎖講防止法 | 特定商取引法 |
| 法律上の扱い | 全面禁止(加入も禁止) | ルールを守る限り認められる |
| 利益の出どころ | 後から加入した人のお金 | 商品やサービスの販売 |
| 商品・サービス | 無い、または名目だけ | 実際に流通している |
| 組織の行く末 | 必ず破綻する | 外部への販売で利益が出ていれば、破綻するとは限らない |
違いの核心は、お金がどこから生まれているかです。
マルチ商法は違法?合法と違法の境目
特商法は連鎖販売取引そのものを禁止していません。違法かどうかは、ルールを守っているかどうかで決まります。
禁止ではなく規制:特商法が定めるルール
- 勧誘の前に、勧誘する人と統括する会社の名前、勧誘が目的であること、商品やサービスの種類を告げる(第33条の2)
- 事実と違う説明や、威迫をしない。目的を隠して呼び出し、誰でも出入りできる場所以外で勧誘しない(第34条)
- 契約の前に概要書面を、契約の後に契約書面を渡す(第37条)
違反すると、行政の指示や最長2年の取引停止命令の対象です。第34条に違反した場合の罰則は、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方です(第70条)。
違法になりやすいのは勧誘の場面:行政処分に多い違反
消費者庁の「執行状況」に載っている分では、2022年4月以降に連鎖販売取引で行政処分が出た日は6日ありました(2026年10月時点)。どの日の処分にも、勧誘の前に名前や目的を告げる義務(第33条の2)への違反が含まれています。
ほかに、利益が確実だと誤解させる説明、書面の不交付、借入れの際に収入を偽って申告させる行為なども並びます。会社の仕組みが法律に沿っていても、勧誘する一人ひとりがルールを破れば違法です。
商品があってもねずみ講とみなされ得るケース
「商品を売っているから、ねずみ講ではない」とも言い切れません。消費者庁の特定商取引法の解説は、物品の販売などを掲げていても経済活動の実態がなければ無限連鎖講にあたり得るとし、「両者の区別については、実態に即した判断が必要となる。」としています。
相場とかけ離れた商品を入会の条件に買わせ、報酬は新しい会員の支払いからしか出ていない組織などは、無限連鎖講とされるおそれがあります。
投資用のツールや副業のノウハウなど、商品をまったく扱わない「モノなしマルチ」もあります。国民生活センターによると、マルチ取引の相談は2025年度に4,003件(2026年5月31日時点の集計)。同年度の相談の状況では、契約当事者の20歳代が29.3%で最多です。
健全なネットワークビジネスの見分け方:法律にもとづくチェックポイント
合法であることは、最低限の条件にすぎません。次の3つの面から確かめてみてください。
報酬と商品:お金がどこから生まれているか
- 報酬が、商品を実際に使う人への販売から生まれているか。新しい会員の入会金や登録料が、報酬の主な出どころになっていないか
- 値段が相場とかけ離れていないか。会員以外にも買う人がいるか
勧誘のしかた:最初に名乗り、目的を告げたか
- 勧誘の前に、勧誘する人と統括する会社の名前、勧誘が目的であること、商品やサービスの種類を告げられたか(第33条の2)。「ご飯に行こう」と目的を隠して呼び出し、そのまま勧誘するのはルール違反になり得ます
- 「必ず利益が出る」といった言い切りがないか(第34条、第38条)
- 借金やクレジットカードでの支払いを勧められていないか
業界団体の日本訪問販売協会も、会員企業向けの自主行動基準で、ごく一部の高収入の例で収入を強調することや、借金を勧めることを禁じています。
契約の手続き:書面と退会・返品の説明があるか
- 契約の前に概要書面を、契約の後に契約書面を受け取ったか(第37条)
- 退会や返品の決まりを、契約の前に説明されたか
決められた内容の契約書面(承諾のうえでの電子交付を含む)を受け取るまで、クーリング・オフの20日は始まりません。
MLMをやめたいときのルール:クーリング・オフと中途解約
ここからのルールは、店舗を持たずに取引する個人の会員が対象です。
クーリング・オフは契約書面を受け取ってから20日以内
契約書面を受け取った日から数えて20日以内なら、理由を問わず契約を解除できます(第40条)。再販売用の商品の最初の引き渡しが書面より後なら、その日から数えます。通知はメールなどでも送れ、出した時点で効力が生じます。
クーリング・オフについて事実と違う説明や威迫を受けて解除できなかった場合は、20日を過ぎても、解除できる旨の書面を改めて受け取ってから20日以内なら解除できます。
20日を過ぎた後の退会と、商品の返品の条件
20日を過ぎても、退会(連鎖販売契約の解除)はいつでもできます(第40条の2)。退会にあわせて法律にもとづく返品を求めるには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 入会から1年を過ぎていない
- 商品を受け取ってから90日を過ぎていない
- 人に売っていない
- 使ったり、一部でも消費したりしていない(販売した側が使わせた場合を除く)
- 自分の責任でなくしたり、壊したりしていない
返品した商品について業者が請求できるのは、販売価格の10分の1と、その額への遅延損害金までです。ただし、契約にかかった通常の費用や、返品した商品に関して受け取った報酬は、別に精算されることがあります。
困ったときの相談先
消費者ホットライン「188」に電話すると、最寄りの消費生活センターなどにつながります。契約の取り消しなど法的な判断が必要なときは弁護士に、ねずみ講の疑いがあるときは警察にも相談できます。
よくある質問(FAQ)
Q: ネットワークビジネスとMLM、マルチ商法は同じもの?
法律上は、ほとんどが特商法の「連鎖販売取引」にあたり、呼び方の違いと考えてかまいません。ただし、法律上の扱いは呼び名ではなく、実際の仕組みで決まります。
Q: ねずみ講に入ってしまっただけで罰せられる?
無限連鎖講防止法は加入も禁止していますが(第3条)、罰則があるのは開設・運営と勧誘です。加入しただけで罰せられる規定はありません。ただし、人を誘えば処罰の対象になります。
Q: 有名な会社なら、ねずみ講の心配はない?
会社の規模や知名度だけでは判断できません。名前の知られた会社が、勧誘の違反で行政処分を受けた例もあります。処分の情報は、消費者庁の執行状況で確かめられます。
Q: 返品できなかった在庫はどうすればいい?
自分で使う、家族に譲る、買取に出す、といった方法があります。売る前に、所属先の規約に転売の決まりがないか確かめておくと安心です。売ることの違法性については、よくあるご質問でも説明しています。
まとめ
ねずみ講は、後から入る人のお金だけで成り立つため全面的に禁止され、MLMは商品の販売で成り立つ取引として、特商法のルールのもとで認められています。
ただ、商品があっても実態がなければねずみ講とみなされ得ますし、会社の仕組みが合法でも、勧誘の場面で違反は起きます。続けるかどうかは、お金の流れ、勧誘のしかた、書面と退会・返品の説明の3点を自分の目で確かめてから決めてほしい、というのが編集部の考えです。
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